海の文化のすばらしさを世に伝える“翻訳家”の必要性

2015.10.16 - COLUMN
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記念すべき1号目のUNABARAによせて頂いた数々の原稿のなかで、内容をたのしみにしていたひとつが、西田亮介さんによるコラム。西田さんは情報社会論と公共政策を専門とする社会学者で、現在は東京工業大学マネジメントセンター准教授の職にある。いわば自由な気風にあふれるビーチカルチャーやサーフィンとは対極な場所で活躍している人といえる。

しかし、興味深く感じていたのは、慶応大学の藤沢キャンパスに通っていた学生時代にサーフィンをはじめ、湘南にあるサーフショップの大会で優勝する腕前を持つということ。ツイッターのプロフ画像を個性派サーファーとして知られるオジー・ライトにしているほどのサーファーだということだった。

つまり、社会を俯瞰して見られる視点と、サーフィンへの造詣深さをともに持つ、非常に希有な人。もっと分かりやすくいうと、サーフィンのすばらしさを、しっかりと翻訳して世間に伝えられる人。それが西田さんなのではないか。そう思ったことが、原稿をお願いする背景にはあった。

そして実際に打ち合わせの場である立命館大学の東京キャンバスで言葉をかわしてみると、これが非常におもしろい。まず、社会性と相容れない部分はむしろサーフィンの魅力であり、しかもサーファーたちは自分たちで社会をしっかり築いていて、独自の価値観で生きていることを、自分の言葉で話された。それだけ西田さんのカラダにサーフィンが染みているということなのだろう。

一方、学者として、サーフィンの魅力をサーファーではない人に伝えることの必要性を感じてもいた。小誌UNABARAに掲載された本稿では、消波ブロックの投入でサーフスポットが消滅してきたことや、多くの人はサーフィンが海水浴場外でおこなわれることを知らないといった具体例をひき、サーフィンの本質を存続させるために、社会性あるコミュニケーション手段“も”必要ではないかとしめている。

僕自身、UNABARAをはじめるにあたって考えていたことは、海側の文化のすばらしさを、海側にいない人へ伝えていきたいことだった。なぜなら日本のサーフィンは確実に前進を遂げているから。日本の山にはあるように、日本の海にも文化をつくっていきたく、そろそろ実現できるタイミングだと感じたからだった。

サーフィンが東京オリンピックの追加種目候補となったり、何より西田さんのようにアカデミックな世界にサーファーがいる時代となった。以前からトレンドに敏感なマスコミ人やファッションピープルにサーファーは多くみられたものの、おそらくはこれからの数年で、行政や銀行といった堅いといわれる職業にもサーファーを普通に見つけられる時代がやってくる。

そのような時代を生きる僕らの子供や孫の時代を思えば、サーフィンの世の中への浸透具合は今の比でなくなる。野球やサッカーのような生涯スポーツとして楽しまれる時代とて夢ではない。

夢ではないからこそ、今、そしてこれからの時代に必要なことは、いっそう多くの人にサーフィンの、ビーチカルチャーのすばらしさを知ってもらうことにある。そうすれば海岸の環境は社会の資源として整備されていく。そこにいるだけで心地よいビーチが、日本の各地に生まれていくことになる。

そう伝えてくれるのが、西田さんのコラム。UNABARAもその論調と同じスタンスをとり、これからも雑誌制作にまい進していきたいと思う。

文/小山内 隆(UNABARA編集長)
写真/藤野 敬

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